準決勝して以来、ナオはさらに練習をするようになった。ヒロトたちが体を壊さないか心配になる程だ。

ナオは空手部の中で一番の実力者となり、部長にもなった。もはや、コーラを優雅に飲んでいるヒロトとは別の世界の人間である。

「……体、壊すなよ」

ヒロトがそう言うと、ナオは一瞬だけ練習の手を止め、ヒロトに微笑んだ。



それから数ヶ月。ヒロトたちが桜の木の下にいる時、ナオはいつも欠かさず練習をしていた。そして、それが実ったのか明日は全国大会だ。この空手部の中からナオだけが出場する。

「ナオ、まだ練習してたのかよ」

桜の木の下にヒロトが行くと、ナオは練習をしているところだった。先ほどまで部活で大暴れしたのに、どこにそんな体力があるんだとヒロトは苦笑する。

「悪りぃ。でも、体を動かしてると余計なこと考えずに済むんだ。それに、明日は俺の夢が叶うかもしれないから」

「全国大会で優勝か?」

「ああ」