愛溺〜偽りは闇に堕ちて〜




「バイクって寒いし本当に嫌」
「車の免許、早く取りたいなぁ」

そこは違法なことをしないんだ。
真面目なのか不真面目なのか、あまりよくわからない。


また先ほどと同じように瀬野の後ろに乗り、腰にギュッと掴まった。


「この体勢、結構好きかも俺」
「は?」

「川上さんに甘えられてるように思えるから」
「……降りる」


なんて言った時にはもうバイクが走り出していて。
降りるタイミングを完全に失った。


「はい、危ないからじっとするんだよ」
「許可なく走り出すのが悪いんでしょ」


自分が余計なことを言ったくせに。
怖くて掴まるしかない私も私だけれど。


「ちゃんと掴まっておくんだよ」


なんて、すっかり余裕のある瀬野に戻っていた。
読めないのは瀬野の方だ。

コロコロと感情が変わって。
余計に私を混乱させる。


“強いけれど弱い”

矛盾したこの言葉が、今の瀬野にピッタリな気がした。


そんな彼が私と重なるように思えるのは気のせいだろうか。

きっと気のせいだと無理矢理思うことにする。