「川上さんに声かけた日、家から追い出されたっていうのは女の家から追い出されたんだよ。遊びだって約束したのに本気になられて、怒り狂って『出て行け』って。酷いよね、本当」
遊んでいる瀬野もどうかと思うが。
本人の目的はヤルことではなく、泊まらせてもらうことのようだ。
「だから驚いたよ。川上さん、俺に何も求めないから。ご飯まで出してくれて。むしろいいのかなって、正直戸惑った」
瀬野を泊めた日を思い出す。
確かに彼は戸惑いを見せていたような気がする。
「まあ実際に純粋だったって理由もあるんだろうけどね」
「…っ、触るな」
優しい笑みを浮かべて。
優しい手つきで私の頬に触れてくるから、振り払おうとまでは思わない。
あのキスすらも思い出されて、鼓動が速まる気がした。
「かわいい」
「うるさい…」
家にあげるんじゃなかったと、少しばかり後悔が襲う。
狂わされるから。
乱されるから、目の前の男は嫌いだと。



