「いつもは眠れないの?」
「寝る時間もあまりないからね」
「……どうして?」
その時、瀬野の言葉を思い出す。
『家、追い出されたから泊めてくれないかな』
あの日が初めてじゃなかったのだろうか。
家から追い出されることが、これまでに何回もあったのだろうか。
「毎日女の家に泊まらせてもらってるから」
「……え」
「その代わり、体で支払うって言うのかな。
相手に尽くすんだよ」
瀬野は表情を一切変えずに、さらっと理解し難いことを口にした。
到底理解できそうにない。
「あ、何人かの女の家を転々としてる感じね。
特定の人にしたら向こうも飽きちゃうだろうから」
「いや、そう言うことじゃなくて…」
「びっくりした?俺ってこういう人間。家にいるくらいなら、毎日体重ねてまで他の女の家に泊まることを選ぶよ」
とにかく家が嫌いなのはわかった。
家庭環境に問題があるのもわかったけれど。
想像を絶する回答に、開いた口が塞がらない。



