「ふーん、まあいいや。
じゃあお言葉に甘えて送ってもらおうかな」


わざと興味のないフリをして。
まだ夜のように暗い外へと出る。

朝方のため、外はひどく冷え込んでいた。


「はい、これ被ってね」


バイクが停めてある駐輪場へ着くなりヘルメットを渡され、それを被る。

髪がボサボサになるのは不服だが、仕方がない。


初めて乗るバイク。
それも二人乗り。

瀬野の腰に目を回して、落とされないようぎゅっとしがみつく。


「かわいい、大人しく掴まって」
「……バイクなんて初めてだから」

少しだけ怖い、なんて。


「じゃあ目を閉じて」
「目…?」

「そう。あとは俺の背中にひっつけばいいよ」


言われた通り目を閉じて、真っ暗な世界がやってくる。

それから瀬野の背中にピタリとくっついた。
不思議と恐怖心が薄れる。


動き出したバイク。
瀬野が前にいるおかげで冷たい風はあまり当たらない。


変な感じだ。

今までまったく関わりのなかったクラスメイトと、バイクの二人乗りをしているだなんて。


「瀬野」
「どうかした?」

声がバイクの音にかき消されそうになる中、瀬野が私の声を拾ってくれる。