「……あれ」
「…っ」
まるで、のぼせたように全身に熱が巡る。
何この感覚。
尋常じゃないくらい顔が熱くなって、それから心拍数が上がる。
「その反応は驚きだな」
「っ、うるさい…」
本当に驚いたのか、一瞬目を見張ったかと思えば。
すぐに状況を理解した瀬野が、自分を有利な立場へと持っていく。
「俺、川上さんの弱点見つけちゃったね」
私の頭にポンと手を置いて。
勝ち誇ったように笑う。
「この間の反応もわざとじゃなかったんだね。簡単に男を部屋に上げて、本当に純粋な人間だったんだ。慣れてそうなのに」
「……黙って」
「顔、真っ赤。もしかして胸もドキドキしてる?」
「…っ」
そんなの、初めてなのだから仕方がない。
優しいキスに戸惑って、どうすればいいのかわからなくなって。
キスされたという事実に顔を赤らめて何が悪い。
「キスだけでこんな風になって。
本当はもっと手を出そうと思ってたのに」
「なっ…」
「もし俺じゃなかったらそのギャップに欲情して襲われてたかも。ここにいるのが俺で良かったね」
そんな軽い口調で言われても腹が立つだけだ。
余裕そうな表情を崩してやりたいけれど。
「どうする?川上さん。
このまま俺に手を出されるか、それとも───」
その二択はどちらも私のプライドをズタズタにするようなものだった。



