愛溺〜偽りは闇に堕ちて〜




「それがね、残念なことに俺…川上さんに興味抱いちゃったから難しいかなぁ」

「……は?」


今なんて言った?

目の前で眉を下げながら、申し訳なさそうにしている男は今なんて…?



「見たこともないモノに出会ったら興味湧くよね?
それと同じだよ」

「……そこら辺にいる女子と同じですが?」
「違うんだよ、それが。だからこそ知りたい」


右手でネクタイを緩めながら、決して私から視線を外そうとはしない。

真っ直ぐ捉えられ、その瞳から逃げられない。


「残念だけど、私のことを知ったところで何の得もないよ“瀬野くん”」


突き放すような言い方をしながらも、表向きの笑顔を向ける。

張り付いた笑顔を浮かべる方が楽かもしれない、なんて。


「それを決めるのは俺だよ、川上さん」


私の横髪を耳にかける動作をして、ふっと微笑んだかと思えば。


「な、に…っ」


突然瀬野が顔を近づけてきて。
そのまま唇を奪われてしまう。

柔らかな瀬野の唇と重なる感触がした。
反射的にギュッと目を閉じる。


「……んっ」


強引に奪ってきたくせに、重ね方は優しくて。
初めてのキスに戸惑う。

これが、キスというもの───?