愛溺〜偽りは闇に堕ちて〜




「賢い川上さんならわかるよね?
これは脅しってこと」


私の耳元に顔を寄せて。
ひどく落ち着いた声で囁かれる。


「情報収集の得意な仲間がいるんだ。
川上さんも、これで俺に逆らえないね?」


ふっと微笑んで。
私の頭を撫でながら優しく抱きしめてくる。


「……目的は何」

「そんなものないよ。ただ川上さんは人より賢いから、早めに抑えておこうと思っただけ」


私が疑っている間に、その対処法を考えていたわけか。

その結果今の脅しに繋がると。
さすがの私もここまで考えていなかった。



「あの日、どうして俺は川上さんに声をかけたんだろう」

「…………」
「そうしたら俺たちが関わることなんてなかったのに」

「すごく後悔してる。
自分の株を上げるためだけに瀬野を家にあげたこと」


無理矢理瀬野から離れて、鋭く睨み付ける。


「結構バッサリ言うんだね」
「本当に迷惑、面倒くさい」

「それは本当に謝るよ」

「だったらこれで終わりにしたらどうなの?お互い綺麗さっぱり忘れて、そしたらすごく平和が戻ってくると思わない?」


相手が簡単に乗ってくるようには思えないけれど。
一種の賭けみたいなものだ。