2年のクラス発表の時、こんなことになるだなんて予想できるはずがない。


「ここは絶対に一緒のクラスにしてくれないと困るよ」
「どうして?」

「川上さんを悪い虫から守るため」
「虫って…この学年の男子ってこと?」

「もちろん。
ほぼ全員が川上さんを狙うよ、間違いない」

「いや、考えすぎだから」


仮にも一度私は“最低な女”というレッテルを貼られた身だ。

けれど別れたという噂は“デマ”だったと瀬野が説明し、喧嘩で一時期距離を開けたということにした。


今では彼と元通りの関係に戻っているのだから、周りも噂はデマだったのだとすぐに信じてくれた。


そのおかげで私を悪く言う人たちもほとんどいなくなり、それは精神的な面で楽になった。



「川上さんは疎いからなぁ、多分男の好意に気付かなさそう」

「し、失礼ね…!
瀬野からの好意は伝わってる、し…」


自分でそのような自惚れ発言をして恥ずかしくなる。


「そっか、伝わってて良かった。でも俺は川上さんに、まだまだ好意を示して欲しいな」

「……いや」
「川上さん、滅多に言葉にしてくれないから」


瀬野みたいに『好き』を簡単に言葉にしてしまう方がすごいのだ。

私ができるわけがない。
言葉にすることを拒否して、私は逃げるように外へ出た。


「川上さんが逃げた」
「逃げてない!学校に行くだけ!」

「じゃあ手を繋いで行こう」
「あっ、もー…」

瀬野は私が断る前に手を繋いできた。
本当に先手を打つのが早い。

本当に嫌ならば抵抗するけれど、その手を振り払わなかった私も私だ。