その状況にまだ信じられない自分がいた。
隣を見れば、すぐ近くに瀬野がいる。

それだけで泣きそうになってしまう。


「ほら、そんな顔しないで」


こんな怪我してまで私を求めてくれて。
本当にバカだ。

バカだけれど、嬉しかった。


「だって、あんたが…」

「俺、言ったよね。
弱っていく川上さんを放ってはおけないって」

「でも…」

「その話はまた後にしよう。今はまだ、川上さんがそばにいることに喜びたいから」


瀬野が私を見て優しく笑うから、思わず目から涙が溢れてしまう。


「もー、いつの間に泣き虫になったの?」
「あんたと…離れてから」

「そんなかわいいこと言って。大丈夫、俺はわかっていたから。無理させてごめんね」


無理したのは瀬野の方だ。
こんな怪我まで負って。

謝るのは私の方だというのに、瀬野は何も言わずにただ私を抱きしめてきた。