愛溺〜偽りは闇に堕ちて〜





「俺もそこまで築けなかった。そして瀬野は言ったんだ、俺たち“雷霆”の力を貸してほしいと。

お前はいつも俺たちを駒としか扱ってない。けど瀬野は雷霆の存在を求めてくれた。

そして気づいたんだ、統一したらそれぞれの族が潰れずに残すことができる。だから俺は瀬野に手を貸した」


ゆっくりと足を進め、瀬野の隣へと立った。


「それにさっき、煌凰の奴らにも話をしてきた。
ほとんどの奴らが揺れていた。

結局お前は自分のことしか考えなくて、煌凰の仲間全員を恐怖でまとめ上げていただけなんだ」



彼の目に迷いはなかった。
初めから瀬野たち仁蘭に力を貸すつもりだったようで。

だとしたら瀬野は、勝つことをわかっていた?



「もう終わりにしようか。
誰も恐怖での支配を望んではいない」


瀬野の落ち着いた声が、すべての終わりを告げていた。

けれどその瞬間すら、剛毅さんが表情を崩すことはなかった。