「川上さん、立てる?」
「…っ」
その時、瀬野の声が聞こえてきた。
優しい声だった。
「おいで、もう離さないよ」
瀬野が私の手首を掴んだかと思うと、ゆっくりと立たされる。
さらには腰元に手をまわされ、途端に瀬野と密着状態へと変わった。
その安心感というのは計り知れない。
体も彼を求めている。
私も瀬野にしがみついた時、再び明かりはついた。
そして驚くことに、形勢が逆転していた。
圧倒的不利だったはずの仁蘭の多くが乗り込んでいたのだ。
それもほとんどの人たちが無傷で。
「うわっ、涼ちゃんすごい怪我!」
「本当に瀬野は無茶をする…」
光希くんも悠真くんもいつもの調子で、余裕すら感じられた。
「───どういうことだ」
今の状況を理解していないのは、私を含めたこのアジトに残っていた人物全員で。
剛毅さんのドスの効いた声が響き、一瞬にして辺りが静かになった。



