「───瀬野」
振り絞るような声だった。
油断すれば声が震えて泣いてしまいそう。
倒れ込む瀬野の名前を呼ぶと、彼はようやく反応を見せた。
「どうしてこのやり方を選んだの?
多くの仲間が犠牲になる…諦めて降参しなよ」
「随分と、滅入っているようだね…ひどい顔してる」
瀬野が途中に咳をしながらも、顔を上げて私と視線を合わせてきた。
まだ諦めてないその瞳は力強く、思わずゾッとした。
「何言ってるの、あんたにはもう勝ち目なんてないの。降参して、普通の生活に戻ればいいの」
「そしたら川上さんはどうなる?
一生、あの男のそばにいるの…?」
またそうやって、私のことを考える。
放っておけばいいのに。
「そうなるね。自分勝手なところもあるけど、剛毅さんは気遣ってくれるから平気」
「……そんな顔、しておいて?」
思わず息を呑んだ。
胸が締め付けられるようで、苦しい。
本当は嫌だ。
自分の欲のためなら手段を選ばない彼の隣にいるだなんて。
「俺はね、川上さん。
君の本心を聞きたいだけなんだ」
「……言わない」
こんなボロボロの彼に、今更言えない。
本心なんて絶対に。
苦しい別れ方をしたくない。



