「それから君は宇野良治、29歳」
「ひっ…」
「彼女を妊娠させたみたいだけど、大事な時期にこんなコトしていいのかなぁ」
「な、んで…それを…!」
「さっさとこの男連れて失せてくれない?
君たちを警察に突き出すのも、時間の問題だけど」
「……っ、そ、それだけはやめ…!」
怯えるふたり。
先ほどの自信に満ち溢れた表情は何処へやら。
倒れ込む男を抱え、その場から立ち去ってしまう。
ようやく全てが終わり、途端に足に力が入らなくなった私は、その場で崩れ落ちそうになったけれど。
「……危ない」
「…っ」
瀬野によって私の体が支えられた。
不思議と恐怖心は抱かなかったなんて嘘だ。
体はこんなにも震えていて、怯えていて。
正直である。
「本当にタイミングが良いのか悪いのか、わからないね」
「……瀬野くん、どうしてここに…」
「とりあえず移動しよっか」
私の体を支えながら、足を進める瀬野。
そんな彼にしがみつくのがやっとの私。
なんとも情けない。
「このまま大通りに出ても目立つな」
「……え」
「こっちに来て」
「……っ!?」
こっちに来て、なんて言いながら。
足の力が抜けた私を“そこ”に連れて行くのは簡単だろう。



