「莉乃…?」
何も知らなかった瀬野が、煌凰のアジトにいる莉乃ちゃんに視線を向けるなり、目を見開いた。
「涼介…!」
「おい、こいつを黙らせろ」
その命令で、アジトに残っていた手下が彼女の動きを封じ込めた。
さらには口を塞がれたようで。
騙された莉乃ちゃんの目からは、涙が溢れていた。
「莉乃に何してるの?」
まだ何も知らない瀬野が莉乃ちゃんを乱暴に扱う敵を睨んだけれど。
剛毅さんは笑った。
「馬鹿だなぁ、瀬野は。せっかくの奇襲が簡単にやられて不思議に思わないのか?」
「何言って…」
「騙されたんだよ、この女に。莉乃はお前たちの奇襲作戦を俺たち煌凰に提供した。
他の3つのグループが捕まるのも時間の問題だ」
「……何ふざけたこと言ってるの?」
「事実、莉乃がここにいただろ?
お前たちの行動は筒抜けだったんだよ」
今の状況に、すぐには信じられない様子だった瀬野。
明らかに動揺していた。
そして私は、何もできずにただ自分の手を握りしめることしかできなかった。



