愛溺〜偽りは闇に堕ちて〜



一体この行動にはどのような意図があるのだろうか。
瀬野の表情からは感情を読み取ることができない。

ただ、その触れ方は優しくて泣きそうになる。


「このまま素直に恨めたらどれだけ良かっただろう」
「…っ」

「惚れたら負けってこのことかな」
「え…」


今、瀬野はなんて───?

すぐには理解できなかったけれど。
瀬野は言葉を続けた。


「正直、俺はまだ信じてないよ。
こんな君を見て、信じる方がおかしいよね」

「何言って…私は、もう剛毅さんのことしか」
「川上さんはいつまで無理をするの?」


本当にズルイ。
ここに来て、優しい声で名前を呼ぶだなんて。

強弱をつけた瀬野の接し方に心が揺さぶられる。


「本当のことを言えばいいんだよ。
何も川上さんが苦しむ必要はない」


もう冷たさなんて一切感じられない彼が私を抱きしめる。

思わず背中に手をまわしたくなった。
ギュッと彼にしがみつきたくなる。


やっぱり瀬野じゃないとこの安心感は抱けない。