愛溺〜偽りは闇に堕ちて〜




制服姿ではなく、黒のスーツに近い大人の格好をしている瀬野に学生の雰囲気などはない。



やっぱり瀬野は悪い男だ。
高校生でありながら、夜の街を出歩いていて───


「……っ」

その時、ふと瀬野がこちらを向いた。
私の視線に気づいたのだろうか。

目が合うなり、少し驚いたように目を見張っていて。


「あれぇ、君はどこ見てるの?」

私が反対側の通路から視線を動かさなかったからだろう。

ひとりの男に不審がられてしまい、慌てて前を向く。

ほんの一瞬だったけれど、『たすけて』という口パクをした後に───



「あー、若いっていいな」
「君からすごくイイ匂いがする」


ひとりの男には肩に手を回され、もうひとりの男には腰に手を回される。

なんとも地獄のような時間だった。


まるで腰のラインを確かめるように触れてくる手が気持ち悪い。

体が強張ってしまう。