「個室の居酒屋知ってんだよ俺」
「ホテルでもいいけどな!」
最悪、本当に最悪。
目の前のチャラい男ふたりは本当に悪い奴らだ。
今すぐ逃げ出さないと。
大人しくあの場におらず、嘘をついた罰なのだろうか。
とりあえず落ち着け、冷静になれ、考えろ。
助かるチャンスはいくらでも───
「……っ!?」
視線だけ動かして。
ネオン街を見回したその時。
『それがね…瀬野が度々目撃されるの、ネオン街の裏通りに行くところを。それも綺麗な年上の女性を侍らせて』
沙彩の言葉が脳裏を過ぎる。
それとほぼ同時に、反対側の通路を歩くひとりの男に視線を止めた。
「涼介早く!」
「気が早いですよ、京子さん」
間違いない、瀬野だ。
人気者のクラスメイトである瀬野涼介だとすぐにわかったのは、彼の危ない一面を目にしてしまったからだろうか。
優しくて、穏やかで。
それから大人びた、危険な色気すらも漂わせている瀬野。
彼の隣には明らかに歳上の美女がピタリとくっついている。



