「……川上さん?」
「ごめんなさい…私が弱くて」
「一体何の話を…」
「羨ましいって、思ったの」
はっきりと瀬野に告げる。
どうかお願い、瀬野。
これ以上は私のことを放っておいて。
瀬野には他に守るべき人がいる。
こんな足手まといな私ひとりのために、時間を割く必要はない。
早く母親と平穏に過ごせる日を私は望んでいるから───
「瀬野と瀬野のお母さんが話しているのを見て。
その存在はもう私にはないものだったから」
瀬野のシャツをギュッと握る。
その手は自然と震えていて。
「母親と向き合うことを望んだはずなのに、いざ目にしたら苦しくなって、嫉妬してしまいそうで。
怖かった、私にはないものを持っている瀬野を恨んでしまいそうで。見るたびにこんな辛い思いをしたくないって思ったの」
もちろん嘘だ。
本当は嬉しかった、瀬野が過去と向き合おうとしてくれて。
私もできる限り支えたいと思ったというのに。
涙の理由を隠すためについた嘘はきっと、瀬野の心をも抉ることだろう。
本当にごめんなさい。
私がこんなにも弱い人間なばかりに。



