慌てて彼の胸元を押し返すけれど敵わない。
繰り返されるキスに息が乱れ、このまま染まりたいと思ってしまう。
「本当にやめっ…」
このまま流されそう。
お願い自分、ここで揺らがないで。
息苦しさのあまり涙が視界で歪む。
「最低…」
それでも私は瀬野を睨む。
相手に暴言を吐きながら。
「その割には受け入れてたね?」
「力で押し付けてたくせに。
やっぱり剛毅さんの方が良い」
ここでわざと乱れた髪を整えるフリをして、髪を後ろにやる。
剛毅さんがかけた“保険”を使おうと思ったからだ。
いわばこれが最終手段である。
そして瀬野は案の定、首筋にある痕に気がついて───
「剛毅さん、優しいの。暴力的な人だと思ってたんだけど、かけてくれる言葉も触れ方も優しくて」
まるで“体の関係”があったかのような口ぶりで話す。
もちろんそのような関係を持ったことは一度もない。
そのため“剛毅さん”と言っておきながら、私は瀬野を重ねて話していた。
瀬野の優しく話し方が抵抗する気持ちを失くさせる。
ひとつひとつの触れ方も優しくて、体の力が抜けてしまい身を預けようと思ってしまう。



