愛溺〜偽りは闇に堕ちて〜





その時に私は───



「あの日、君はココアに睡眠薬を加えたよね?
あれ、誰から貰ったの?」


思わずゾクッとした。

優しい声から一変、冷たくトーンを落とした声に変わったからだ。

さらには予想外の質問だった。




睡眠薬を加えたことも、さらに何処から入手したのも───


全て、瀬野はわかっているのだ。
わかっていながら、そのように聞いてきた。

嘘をつく難易度が上がる。
下手に出れば本心を引き出されかねない。


「心許していた相手に薬を盛られるなんて、さすがの俺も考えなかったな…それにあの日のやり取りが全部演技だったなんて、人を信じられなくなりそうだよ」

「…っ」

「ねぇ、もちろん答えてくれるよね?
それとも無理矢理口を開かせた方がいいかな?」



それは脅しだった。
最初の頃にも脅されたけれど、それよりもずっと恐ろしい。

恐怖心を煽るのが上手い。


「……どうせ、わかってるんでしょ」
「答え合わせを一緒にしたいなって」


指先が震える。
それは瀬野への恐怖心からで。


「ご、剛毅さんから貰った…」


“煌凰の総長”という呼び方ではなく、“剛毅さん”と名前で呼ぶ。

それだけでも、瀬野は私と彼の関係の変化に気づくはずだ。