そうでないと他に偽る理由がない。
「隣、座って」
いつも通り向かい合って座ろうとしたけれど、瀬野が私の手首を掴んで隣に座るよう促してきた。
それも私の力では解けないほどの強い力で掴まれている。
それはもはや強制だった。
この力には逆らえそうにない。
無駄な抵抗はやめて、瀬野の隣に腰を下ろす。
この時の心臓はこれまでにないくらい、うるさく鳴っていた。
「本当に良かった、川上さんが無事で…あの日、目を覚ましたら川上さんがいなかったから本気で心配したんだよ」
その言葉の後に瀬野は私をギュッと抱きしめてきた。
たった一週間しか離れていなかったというのに、ひどく懐かしく感じて泣きそうになる。
「……ごめん」
それは本当に悪かったと思っている。
けれど直接言うには勇気がなかった。
正直今も瀬野を拒絶できるかわからない。
実際に今も彼を突き放し、『離して』と言えない自分がいた。
「怪我はない?」
「……うん」
「そっか。
じゃあひとつ聞いてもいい?」
ひどく優しい声で。
落ち着いた様子だった瀬野。
ついに“来た”と思った。
きっと瀬野は私が突然家を出た理由を聞いてくることだろう。



