恐らく瀬野は先に着いて待っていることだろう。
ダメだ、気が重い。
心が揺れて本当のことを言ってしまいそうだ。
きっと全部話せば、瀬野は『絶対に守る』と言ってくれるだろう。
けれどそれだと瀬野の負担が増えるだけ。
私がどうしようが、煌凰との闘いの日は確実に近づいている。
勝っても負けてもこの争いは終わりに向かうだろう。
いっそのこと瀬野の作戦勝ちで煌凰に勝てばいいのに。
そしたら統一の夢が叶い、瀬野も母親と穏やかな日々を送れることだろう。
私はもう瀬野の隣にはいられないけれど。
彼が幸せになれるのならそれでいい。
私はまたひとりの生活に戻るだけ。
「はぁ…」
ついにやってきた。
学校で瀬野とふたりで会う場所の前に。
相談室のドアは今も閉められている。
指先が震え、心拍数も上がる。
どうか最後まで崩れないで、私。
一度深呼吸をしてから、ドアをノックした。
それからすぐにドアを開ける。
はっきりと別れの言葉を告げるんだと心に決めて───
想像通り、中にはすでに瀬野の姿があった。
彼は私に視線を向けて、朝と同様に嘘っぽい笑みを浮かべた。
「良かった、来てくれて」
「……あんたと話、したかったから」
多分、きっと瀬野は怒っている。
その感情を隠すようにして、自分を偽っているのだ。
周りにはわからない上手な作り方で。



