その瞬間、クラスに張り詰めていた緊張感が解れた気がした。
多くのクラスメイトが、瀬野の様子を見て安心したように息を吐いていたけれど。
依然として私の恐怖心は消えない。
今の彼は“偽物の姿”だったからだ。
「本当に良かった。
一週間も連絡なかったから心配してたんだよ?」
続いて安心したような表情をして、私に近づいてくる瀬野。
私は思わず後退りをした。
「愛佳…?」
隣にいた沙彩が不思議そうに私を見る。
この状況で、きっと周りは私の様子が変だと思っていることだろう。
「あ、うん…ごめんね、連絡しなくて」
咄嗟にいつもの私を演じてしまったけれど。
違う、そうでない。
ハッキリと別れを切り出したいけれど、場所が場所だ。
「あのさ、瀬野くん。
今から…」
予想以上に早く瀬野が接触してきたため、場所を変えようと思ったけれど。
もう一限目まで時間が迫っている。
今からでは時間が足りない。
「……昼休み」
「…っ」
「それでいい?
場所は、いつものところで」
私の心を読み取ったのだろう、瀬野が口を開いた。
作り笑いの笑顔で。
何も言わずに離れたことに怒っているのだろうか。
もういつもの彼はそこにいない。



