愛溺〜偽りは闇に堕ちて〜




「ここ一週間、ずっと瀬野も様子がおかしいし…」
「え…おかしい?」

「そう。なんて言うか、怖いの」


どきりとした。
瀬野が怖い…?

あの優しい雰囲気を纏う人気者の瀬野に対して、沙彩が怖いという感情を抱いたというの?


「男子もそんな瀬野に恐れてて、誰も近づかないの。いつも騒がしい教室も、今じゃ静かで気まずいよ…その上愛佳は来ないし」


心臓が嫌な音を立てる。
まだ確かではないけれど、瀬野が偽ることをやめている───?

嫌な汗が流れる。
教室に行くのが少し怖い。


「本当にどうしたの?愛佳たち。理想のカップルが誕生したと思ったんだけど…喧嘩でもした?」

「……喧嘩では、ないかな」


どちらかといえば、一方的に別れを押し付けた。
あの後目が覚めた瀬野は、一体何を思ったのだろうか。

沙彩と一緒に教室に向かう中で何度も足を止めたくなったけれど。


逃げてはダメだと思い、教室に入ったその時。



これまでとあまりにも違う教室の雰囲気に、驚かずにはいられなかった。

何とも異様な光景だった。


いつもは騒がしいはずの教室が、小さな物音すら気になってしまうほどに静かだったのだ。

半分ほどクラスメイトが来ているはずなのに、本当に小さな声で話している人が数人いるくらいだ。