「それより明日、楽しみだな。
瀬野がどう動いてくるのか」
「……それはあんただけでしょ」
私は気まずいのだ。
もし接触すれば、私は嘘を突き通さなければいけない。
何よりそれが不安だった。
簡単に見抜かれてしまいそうで。
「一応、保険かけとくか」
「え……っ!?」
それは突然だった。
触れてくるのも今日が初めてだったというのに、突然彼は私の首筋に唇を当ててきて。
途端に危機感を抱いた私は慌てて彼の胸元を押し返すけれど、ピクリともしない。
これが力の差というものだった。
「やめっ…」
くすぐったくて。
嫌でも反応してしまう自分がいて悔しい
それから間もなくして、チクリと首筋に痛みが走った。
それも一度ではなく、いくつか違う場所にも。
「俺のものって証。これを見せつければ、少なくとも相手はダメージを食らうだろう」
「…っ、本当に最低」
よくもまあ、こんなにも簡単に手を出せるものだ。
「お前も明日から“最低な女”になるんだよ。
俺と同じだな」
負けじと言い返したけれど、彼の一言が私を苦しめた。
明日から私は瀬野を裏切ったという“最低な女”にならなければいけないのだ。
胸が苦しむ中で、彼につけられた首筋の痕が、もう逃げられないという縛りになっていた。



