他に目的があるとすれば───
「……瀬野から奪いたいの?
私も、仲間も」
「はっ、人聞きの悪い。
裏と関わりのある奴らを瀬野から遠ざけるだけだ。
別に瀬野じゃなくて、俺が統一すればいい。仁蘭の…そうだな、東郷にでも話をつけようか。
瀬野にはこの世界から足を洗ってもらう。そうすればどうだ、瀬野は誰にも狙われることなく母親と家族として温かい世界で幸せに過ごせるんだ」
良いように言っているけれど、結局は彼の思うがままに動かしたいだけだ。
簡単に受け入れられるはずがない。
「中途半端が一番良くないと思わないか?」
「えっ…」
「このままだと瀬野はお前や母親を使って脅され、勝ち目のないまま仁蘭は潰される。
無様な瀬野を見て、仲間やお前はまだ瀬野についていこうと思うか?俺だって良心はある、そんな惨めな終わり方をさせたくない」
だからこのやり方を提案した?
本当に最低な男。
けれど私は何も言い返せなくて───
私の鞄のチャックに手をかけた彼。
何をするのかと思えば、中に何かを入れた。
「俺と連絡を取るためのスマホだ。
誰にもバレないようにしろ」
まるで私に拒否権がないような言い方だった。



