愛溺〜偽りは闇に堕ちて〜




病室の中央にはベッドがあり、髪の長い女の人が起き上がった状態で顔を窓の方へと向けている。

最初こそ気づかれなかったけれど、すぐに彼女は私に視線を向けた。


「……え」


少し驚いた様子の彼女は化粧を一切していなくて。
やっぱり瀬野の母親だと思った。

どことなく雰囲気が瀬野と似ているのだ。
彼女は私を見るなり、驚いな様子で目を見張った。


「あなたは…」
「えっと…瀬野くんと同じクラスの川上って言います」

『彼女』とは言えなかった。
結局クラスメイトだと言い、頭を下げる。


「この間、家に涼介と来ていた子よね…?」
「あっ、はい…お邪魔させてもらいました」

覚えてくれていたのか。
そのおかげもあってか、あまり警戒されていない。



「どうしてあなたがここに…?」

「すみません。どうしても瀬野くんのお母さんと話したくて…」


勝手に個人情報を調べた、とまではさすがに言えなかった。


「涼介は…」
「瀬野くんには内緒で来ました」


ここはハッキリと伝えれば、少し切なそうな表情をした。

どうしで今更そのような顔をするのだろう。
やっぱり瀬野の存在が彼女の中で大きいのだ。