愛溺〜偽りは闇に堕ちて〜




けれどここに来て、心が揺らいでしまう自分がいた。
私がここまで干渉していいのだろうかと。

本当にこれが瀬野のためになるのだろうかと。


「…っ、ダメだ」


ここまで来て余計なことを考えるな。
私は真意を知りたいだけ。

それで瀬野が救われるのなら───


「……ここだ」


翼くんに告げられた病室の前で立ち止まる。
そこは個室ようで、【瀬野 香織】と名前が記載されていた。

多分、この中に瀬野のお母さんがいる。


けれどいざ入ろうと思えば緊張してしまい、上手く体が動かない。


「……っ!?」


その時、タイミングよく病室の扉が開かれた。

一瞬瀬野の母親かと構えてしまったが、中から現れたのは看護師さんだった。


「あら、瀬野さんにお見舞い?」
「あっ、えと…はい」


しまった。

ここは花や果物でも買って持ってくるべきだったかもしれない。


さすがにそこまで頭は回っていなかった私。


「良かった。
お見舞いに来てくれて瀬野さんも喜ぶと思うわ。

今すごく気が弱くなっているから、少しでも元気になってほしいの」


少し悲しそうな表情だった。
なぜだろう、嫌な予感がするのは。

とりあえず看護師さんには微笑んで、軽く頭を下げてから病室の中へと足を踏み入れた。