愛溺〜偽りは闇に堕ちて〜




「笑うなんて失礼ですね」
「悪い、ド直球だなって思って」

謝りながらも、まだ笑っている風雅さん。
別にいいのだけれど。


「え、愛佳ちゃんが…愛佳ちゃんじゃ、ない?」
「落ち着け光希」


今にも脳内パンクを起こしそうな光希くんに気づいた悠真くんが、慌てて落ち着かせようとする。

それでも光希くんは理解に遅れているようで。


「じゃあ今までの愛佳ちゃんは…」

「正直初めは嫌だった、こんな場所。瀬野に巻き込まれたせいでここに連れてこられて、本当に面倒だって思ってた。でも───」


最初とは違う気持ちを抱いていることなんて、もう自分で気づいている。


「今はそんな風に思ってないよ」

安心させるためではなく、本心で笑みを浮かべる。
これが今の私だ。


「……じゃあ、僕が今まで通り愛佳ちゃんに馴れ馴れしく抱きついたりしても大丈夫?怒らない?」


光希くんの心配しているところはそこだったのか。
別に光希くんなら大丈夫である。

そこに異性間の感情はないということがわかりきっているから。


「今まで通り接してくれて大丈夫だよ。
光希くんを悪く思っているわけじゃないから」

「本当…!?
それなら良かったぁ」


そこに来てようやく光希くんが安心したように笑った。


「そっか…愛佳ちゃんも色々考えてたんだね。
涼ちゃんのお母さんこと、僕は何も知らなかったや」


かと思うと、少し悲しそうな顔。
光希くんや悠真くんにも、瀬野は自分の事情を隠していたようだ。