「涼介の…?」
「はい。瀬野の母親と話がしたくて」

「でも涼介は嫌がると思うぞ」
「だから私ひとりで動いているんです」

「……なるほどな」


いつになく風雅さんの表情が真剣になる。
きっと風雅さんも“そのこと”に対して色々と考えていたのだろう。


「でもどうして急に涼介の母親と会いたくなったんだ?」

「……いなくなったんです」
「は…?」

「瀬野の前から、消えたんです。
謝罪の言葉を記した紙だけを残して」


それで瀬野は“捨てられた”、“父親の元へ逃げた”のだと思った。

あの通帳に振り込まれていた大金と引き換えに。


「それで探してるのか?」
「はい。どうしても、引っかかるものがあって」

「だから翼の能力が必要ってか。
でも難しいと思うぞ」

「……え」

「翼は涼介の指示でしか動かねぇから。
俺が調べてほしいって頼んでもダメだったな」


風雅さんが苦笑する。
だから瀬野に頼んでもらったと。

風雅さんの頼みも断っていたのか。
けれど、それはどうして?


「中学の時に色々あったみたいだ。
それは俺にもわからねぇ」


私の疑問が伝わったようで、聞かずとも答えてくれた。

そういえば瀬野と翼くん、それから響くんの3人は中学からの仲だと言っていたっけ。