愛溺〜偽りは闇に堕ちて〜




「それは十分に理解しておいてね」
「……わかってる」


離れる気なんかサラサラない。
むしろ離れていきそうなのは瀬野の方だ。

だからその言葉が嬉しいだなんて思う私はおかしいのだろうか。


「離れるつもりなんてないけど」
「うん、絶対だよ」

「離す気もないくせに」
「まあね。川上さんは俺のものだから」


ようやく瀬野が笑う。
いつもの優しい微笑み。

そんな彼を見て安心する自分がいた。


「じゃあ早くあんたの家行くよ、お腹空いた」

「そういえば駅の近くに落ち着いた和食のお店があるんだ。そこはどうかな」

「和食か、良いかも」
「じゃあそこにしよう」


お昼は洋食系だったため、違う系統の店の方がいいだろう。

夜ご飯の店が決まったところで、電車に乗り込み瀬野の家へと向かう。


その途中、煌凰の総長の話は一切しなかった。
多分、意図的に瀬野も触れてこなかった。