「いい女、探してたんだ。
川上愛佳の存在は俺にまで伝わっている。
中々興味深い女なんだな。
度胸もあるみたいだし、俺の女にするのも悪くない」
男は薄笑いを浮かべる。
その笑みにさえ、抗えない気がした。
「───君はふざけてるの?」
その声もまた、低く圧を感じるものだった。
空気がさらに張り詰める。
「残念ながら本気だ、瀬野。
ここまで折れてやってるんだ、いい加減気付けよ」
「無理な願いですね、それは。
やはり貴方はどこまでも高慢で、自己中心な人間だ」
珍しく瀬野は怒りを露わにしていた。
それも静かな怒りに、全身が身震いする。
「そうか、それなら話は決裂だな。
お前ら仁蘭に勝ち目はないというのに」
「随分と過信しているようだね」
「過信じゃなくて事実だ。まだ知らねえみたいだから教えてやるよ。お前らの倒した雷霆のやつら全員、煌凰の一員になった。
以前の“同盟”なんかじゃない、雷霆は完全に消えた。だが雷霆のメンバーは煌凰の仲間入り。どういうことかわかるよな?」
相手の余裕そうな笑み。
瀬野たちが倒した雷霆は消え、そのメンバーは全員煌凰の仲間入りした…?
もしそうだとしたら、ますます煌凰が有利に働くではないか。



