「まあ今日は俺も仲間連れてきてねぇし、喧嘩するつもりもねぇ。ただ瀬野と話がしたくてな」
「……話?」
「ああ。お前たちは雷霆を倒したみたいだな?まさか裏切りに気づいていた上に、自分たちも同じようなことをするとは。
それも、仁蘭の副総長っていう立場の男を送り込んだんだ、簡単にできることじゃない。やっぱりお前はよくできた男だ」
「わざわざ褒めるために来てくれたんですか?」
「はっ、そんなわけないだろ」
動じないのは相手も同じ。
私だけがこの緊張感に押し潰れてしまいそうだ。
「なあ瀬野、やっぱり俺の元に来ないか?
お前になら煌凰の副総長の立場をやれる」
「……俺は仁蘭から離れません。前の総長から受け継いだ意志を、これからも繋げていくんです」
瀬野は真っ直ぐ相手を見つめていた。
お互いに一歩も引かない状態で。
「ははっ、それが“統一”?
何生ぬるいこと言ってんだ、いい加減目を覚ませ」
乾いた笑い声が恐怖心を駆り立てられる。
瀬野が隣にいてもそれなのだから、相手は本当にやばいやつだと。
薄暗い中、フードを被っている相手の顔はよく見えないけれど。
存在感のある男を前に、私は依然として動けない。



