愛溺〜偽りは闇に堕ちて〜




「あ、話変えられた」
「わざと変えたの!合わせてよ」

「そうだね、じゃあこの後はどうしようか」


瀬野を睨むと、彼は苦笑しながら話を合わせてくれて。


「……もう周るところは周ったよね」
「そうだね。時間もいい具合だし…」

けれどせっかくのデートだ。
帰るのは少し惜しい。


「夜ご飯、どこかで食べて帰ろうよ」


瀬野を見上げて、まだ帰りたくない意志を伝える。

遠回しの伝え方だったけれど、彼には伝わったようで優しく微笑んできた。


「うん、せっかくだから何か食べて帰ろうか」
「……じゃあ決まりで」


デートの時間が長引いた、少し嬉しい。
今日ぐらいは恋人らしい時間も多くていいじゃないか。


「あっ、でも川上さん。
先に俺の家寄ってからご飯でもいい?」


早速どこで食べようかと尋ねようとしたら、瀬野が先に口を開いた。

確か朝にも家に寄りたいと言っていた。


「ああ、そういえば言ってたね」
「できれば早い方が嬉しいかなって」


それは自分の母親と会う確率が高くなるからだろうか。

また瀬野の言葉に違和感を覚える。
なんだろう、このモヤッとした気持ちは。