愛溺〜偽りは闇に堕ちて〜




「確かにデザインかわいいね」
「……一緒に」

「うん?」
「瀬野と一緒に、買う…」


ギュッと瀬野の裾を掴んで。
精一杯の素直な言葉。


「お揃い?」
「……ダメ、なの?」

「そんなかわいい目で見ないで。
ダメじゃないよ」


瀬野が優しい笑みを浮かべて、私の頭をポンポンした。

たったそれだけで安心するのだから単純な女だ。


「じゃあ買う…瀬野と」

瀬野の考えが変わる前に、ペアのマグカップを手に取った。


「本当にかわいいことするね」
「……少しだけ、嬉しい」


つい頬が緩んでしまう。
お揃いモノって、憧れるのだ。

あとは沙彩と真田のお土産を選んでレジに並ぶ。
家に帰ったら早速洗って使おう。


「そうだ。
瀬野、帰りにココアの粉買おう」

「ココア…?」

「そう。粉と牛乳。
そしたらこのマグカップ使える」


早速使い道を見つけてしまった。
嬉しい、早く使いたい。


「もー、今日はやけに笑うね。
周りの男がそんな川上さんを見過ごさないよ」

「……?」
「俺のものだって、今ここでキスしてやろうかな」

「…っ!?」


慌てて顔を反対に背ける。
いきなりのキスというワードに頭が追いつかない。


「照れてる」
「……だ、だって…瀬野が、そんな…」

「焦ってる川上さんもかわいいね」
「……かわいいって言わないで」


さっきから恥ずかしい。
こんな人がたくさん集まる場所で。