愛溺〜偽りは闇に堕ちて〜




「瀬野…」
「どうしたの?」

「……わかってる、くせに」


瀬野の両肩に手を置いて、自ら額をくっつけにいく。


ある意味キス予防である。
これ以上キスされてしまえば、壊れてしまうような気がして。


「まだ足りないな、俺」
「……また触る…」

瀬野の手が、腰より下の際どい位置に添えられる。


「何なのあんた、そこがフェチなの?」

「んー、一番手に直接感触が伝わるかなぁって。
上だと下着が邪魔であまり伝わらないし」

「それ以上喋らないで、気持ち悪い。
あと撫でな…っ」


そのイヤラシイ触り方に、反応してしまう私も私。
それをわかっているから瀬野は手を止めないのだ。


「これでも我慢してるんだから許してよ。本当は全部脱がしたいし、なんなら今すぐベッドに押し倒したい」

「……バカ」

「だから自制してるんだよ俺も。川上さんだって怖いだろうし、ゆっくり溶かしていこうかなって」


その変な優しさが、私をおかしくさせる。
私が私じゃなくなるようで、甘さに流されてしまいそうで。


だから今だって───


「……本当はもっと、触りたい…?」

感情のままに口を開く。
まだ足りないって、瀬野が言うから。


「えっ…?」

瀬野も少し驚いた様子。
不思議と恥ずかしさはない。