愛溺〜偽りは闇に堕ちて〜




「早く帰って川上さんを抱きしめたいな」

「抱き枕みたいな扱いはやめてよね。それに先にご飯とお風呂だから。もしかしたら今日買った服を着てる時間なんてないかもね」

「睡眠時間削ってまで見るよ、そんなの」

「なんかそこまで言われると、あんたのことが変態に思えてくるんだけど…」

「だって川上さんが俺のデートのために買った服だよ?そんなのフライングして見たいに決まってる」


期待の眼差しを向けられる。
そこに変な意味はないのだろうか。


「ん、じゃあ時間があったら」
「嫌だ、時間を作るんだよ」

「……本当に強引」
「そんな俺を受け入れてくれてありがとう」

「…っ、別に」


恥ずかしくなって、思わず顔を背ける。
また私の負けである。


口でも瀬野に勝ったことなどない。

もし口喧嘩をしたら、私は簡単に負けてしまいそうな気しかしない。


なんて、喧嘩するほど深い関係にまでなるかはわからないけれど。

今はただ、瀬野と手を繋いで家へと目指して歩いていた。


そして家に帰ると、まずは瀬野が作ってくれたご飯を食べる。

お腹が満たされたところで家事を済ませ、順番にお風呂に入った。


「ねぇ、本当に着ないといけないの?」

髪を乾かして寝る準備を万全にしたところで、帰り道での瀬野の言葉を持ち出した。