愛溺〜偽りは闇に堕ちて〜




「欲情するなら何もない今のうちに、ね?」
「……あんたなら何回もしそうだけど」

「初めての時が一番興奮が大きいよ。
だから今日着てほしいなぁ」


そのキラキラする瞳は何だ。
悪い予感しかしないのだけれど。


「服、伸びるようなことはしないでよ?」

「もちろん。買ったばかりなのに、そんなひどいことはしない」


それはどうだか。
瀬野だから何があるかわからないけれど。

結局私が折れないといけない未来は見えているのだから、ここは刺激しないよう素直に受け入れておく。



「……それで、瀬野はご飯食べた?」
「まだ食べてないよ。ひとりで食べても美味しくないから」

「そう言うと思った」
「……川上さんは?」

「今すごくお腹空いてる」
「良かった。実は作ってあるんだ、ふたり分」

「本当?それは嬉しい、ありがとう」


瀬野のことだからご飯をひとりで食べないだろうと思っていた私は、沙彩のご飯への誘いに断っていたのだ。

すでに作ってくれているということで、作る時間もいらないから楽だ。