そして自分の家の最寄りに着くなり、優しい声が私の名前を呼んだ。
「川上さん」
「……今日、予定があったんじゃなかったの?」
「あったよ。
川上さんの身を守るっていう大事な予定が」
「…っ」
「今は敵も静かだけど、油断は禁物だからね」
瀬野が駅まで迎えに来てくれたのだ。
どうやら私の身の安全を確保するため、真田の誘いを断ったらしい。
「それ、今度のデート服?」
「…さ、沙彩に無理やり買わされただけだから…」
「すごく気になるなぁ。
川上さん、今日着て見せてよ」
「え…」
さりげなく私の荷物を手に取って、さらに手を繋いでくる彼。
爽やかな笑顔を浮かべているけれど、言っていることは何かおかしい。
「先に見ておきたいな」
「…っ、デートの日じゃないと意味がな…」
「でも当日だと欲情しちゃって、デートどころじゃなくなるかもしれないよ?」
「…っ!?」
よくもまあそのようなことがサラッと言えたものだ。
せのの神経をそろそろ疑いたい。



