愛溺〜偽りは闇に堕ちて〜




「……ありがとう」


ここは素直にチケットを受け取る。
ふたりには相応のお土産を買おう、なんて。

すでに行く気持ちになっている私も私だ。


「せっかくだからさ愛佳、今日デート服買いに行こうよ!」

「えっ、今日?」

「そう、今日!
瀬野をさらに惚れさせる作戦だー!」


なんて、私よりも沙彩の方が張り切っているため救われた。


別に私は張り切っていないと思えるから。

ただ遠出が久しぶりであるため、こんなにもワクワクしているだけだと。


「うん、行こうかな」
「そう来なくちゃ!」

つい沙彩の誘いを受け入れてしまう。
別に瀬野を惚れさせるために買うわけではないけれど。

「本当に川上さんはかわいいなぁ、涼介が羨ましいぜ。せっかくだから俺たちも遊ぼうぜ!」

「……ごめん、俺は予定があるんだ」
「えー、なんだよ」


どうやら瀬野は真田の誘いを断ったようだ。
また莉乃ちゃんに会うのだろうか。

けれどもう以前のように不安な気持ちなど湧かない。