「ふふーん、それはね。真田と話してたんだけど、ふたりの恋を応援したいってなって…」
「ふたりとも、まだデートしてねぇんだろ?
だから尊いふたりにこれを献上してやろう!」
なんだか嫌な予感しかしない。
というより、真田から差し出されたチケットらしきものがさらに嫌な予感を駆り立ててくる。
「水族館の、チケット…?」
先に口を開いたのは瀬野だった。
どうやらそれは水族館のチケットのようだ。
けれど───
「水族館って、結構遠いよね…?」
確か電車だと1時間半以上はかかる気がする。
「でも観光スポットもたくさんあるから、日帰り旅行みたいな感じで行って来なよ!まだデートしたことないんでしょ?」
「えっ…」
パッと瀬野に視線を向ければ、困ったような表情を作っていた。
どうやら瀬野が真田にでも言ったようだ。
まあ余計なことさえ言わなければいいのだけれど。
確かにデートなんてしたことはない。
その代わり危ない場所には何度も連れて行かれるのだが。
「てことで、楽しんできてね!」
ニコニコ笑う沙彩と真田は、良心でやってくれているのだろう。
それなのに拒否などできない。



