落ち着けと何度も心の中で唱えるけれど落ち着けない。

これだから瀬野は嫌いだ。
いつもいつも私を狂わせる。


「……」


それでも瀬野はいつもの様子と何一つ変わらない。

先ほどからチラチラと瀬野を見てしまう私の方が意識しているのだ。


浮かれているみたいで何か嫌だ。


いつも通りを装いたいけれど、どうしても昨日のことが頭から離れてくれない。



「ねぇ、川上さん」
「……なに」


制服に着替えて準備を終えたけれど、時間にはまだ余裕があったため部屋で座っていると、瀬野が隣にやってきた。


「どうして顔を背けるの?」

そう。
瀬野の指摘通り、彼の方を向けないのだ。


「視線は感じるのに、俺が見たらこうだよ」
「…っ、気づいて…」

「俺たちって正式に恋人同士になったんだよね?」
「……なってない」

「それは聞き捨てならない言葉だな。
俺の気持ちは受け入れてくれるんだよね?」


瀬野が私の肩に手をまわして。
自分の元へと抱き寄せられる。

それに逆らおうとせず、私はただ身を任せた。