「莉乃の父親は、俺の父親だったんだ」
「……っ」

声が出なくなる。
つまりふたりは血が繋がっている…?


けれど、ふたりの歳の違いはひとつだけ。
それって、もしかして───


「本当にイカれてるよね。父親は不倫していた挙句、その相手にも妊娠させてたんだ。

それで産まれたのが莉乃。俺も最近まで知らなかったよ。高校に上がる前、莉乃が少しの手かがりで俺を見つけたんだ」


私の頭を撫でる手つきは優しい。
けれど、声はひどく冷たくて怖い。

憎しみ、恨みが込められているような。


「結局父親は姿を消した。今も行方はわからない。もしかしたら他の女とも関係を持っていたのかもしれないね」

「……っ」


「俺の母親も惨めだよ、そんな男に本気で惚れて結婚して。挙句に捨てられて、自暴自棄になって。

物心ついた時からずっと暴力を振るわれてた。男と遊んで、暴力を振るっての繰り返し。でもいつからか、家にほとんど帰ってこなくなって、代わりにお金だけ置かれてた」


言葉が出ない。

クラスの人気者で、誰にでも優しくて。
いつも穏やかに笑う彼の壮絶な過去が明らかになって。


ああ、私は幸せな家庭で育ってきたのだと思い知らされる。