愛溺〜偽りは闇に堕ちて〜







その日の夜。
家に帰って、瀬野の作ったご飯を食べて。

いつもと変わらぬ夜だった。


今日は学校を休んでしまったけれど、明日も普通に学校がある。

沙彩たちに怪我のことを聞かれるだろうから、なんで言い訳しよう。


階段から転んだ?
それとも自転車と衝突した、とか。

とりあえず瀬野の暴力と誤解されないように気をつけなければ。


まあ瀬野の性格的にそのような誤解は招かないだろうが。


「怪我、大丈夫?」
「……あ、うん」


お風呂から上がり、怪我の具合を確認していると瀬野に声をかけられる。

咄嗟に頷いたけれど、まだまだ傷口が塞がりそうにない。


しばらくは傷が残ったままだろうか。
一応髪で隠れる位置なのだが、痕が残っても困る。

医者は大丈夫だと言っていたから、そのうち傷口が消えるのだと信じたい。



「俺が手当てしてもいい?」
「…え」

「少しやりにくそう。
俺にやらせてほしいな」


確かに少しやりにくい。

鏡を確認しながら傷口を消毒し、ガーゼでその部分を覆わなければならない。


さすがに包帯を巻くのは目立つため嫌である。