愛溺〜偽りは闇に堕ちて〜



「……わかった。
じゃあ涼介、また今度行こうね」


風雅さんの誘いを受け入れた莉乃ちゃんは、一度瀬野のそばへと戻る。


「もちろんだよ」
「……っ」

すると瀬野は何も言わずに莉乃ちゃんの頭をポンポンして、優しく笑いかけていた。

どうやら私はそのようなふたりをやり取りを見たくないらしく、反射的に視線を逸らしてしまった。


「じゃあ莉乃、行くか?」
「まだ!あと少し涼介と一緒にいる!」

「ははっ、そうか。
なら俺もまだここにいるか」


風雅さんも瀬野も莉乃ちゃんにひどく優しくて。
なんとも嬉しくない気持ちが自分の中で広がってしまう。

なんだろう、モヤモヤする。


「愛佳ちゃん愛佳ちゃん」

その時、光希くんが私の腕を突っついて、小声で話しかけられる。


「……あ、どうしたの?」

声をかけられたことにより、そこに神経を向けなくて良いため少し心が軽くなるのがわかった。



「もうさ、莉乃ちゃんは放っておいて僕たちも奥の部屋に行こうよ」

「え、でも奥には…」

「きっと寝てるだろうから大丈夫!それに触れなきゃ良いんだからさ!テレビでも観よう!」


光希くんは一度瀬野に向かって舌を出し、怒っているのをアピールしてから私を奥の部屋へと連れて行く。