「ワクワクなんてしない…!早く帰るよ」
「あっ、逃げた」
「逃げてない!」
「まあ今日は昼休みに川上さんとキスできたからいいや、我慢しよう」
「……っ、嫌い」
「ほら、先に行かないで」
瀬野を無視して行こうとしたけれど、腕を掴まれて制されてしまう。
「なら早く来なさいよ」
「うん。離れないように手、繋ごう」
ちゃっかり恋人繋ぎをしてくる瀬野。
私に指を絡ませて、ギュッと握ってくる。
誰もいない廊下。
窓の外からは運動部の声が聞こえてくる。
なんだか私たちだけが取り残されたような気分だ。
「ねぇ、靴箱に着いたら手を離してよね」
「さすがにそれはわかってるよ。
まあ、バカップルと思われてもいいけどね」
「絶対に嫌。付き合うって噂が流れたんなら、せめて純情な恋愛であることを示したい」
「どこまでも好感度を上げに行くね、川上さん」
「こうなればあんたも利用させてもらうから」
ここまで来たらもう本性は見せられない。
今までの好感度が高かった分、下がった時は私にとって大ダメージだろう。



