愛溺〜偽りは闇に堕ちて〜







放課後、教室に誰もいなくなるのを待つ。
それが瀬野との約束だった。

テスト前には残っている生徒もチラホラいるが、冬休みが明けて1週間しか経っていない今では、誰一人として残らず教室を後にしていた。


みんな部活に行くなり、帰るなり。

どうして残ってるのかと沙彩に聞かれたけれど、『友達が部活のミーティングがあるらしくて待っている』と、適当に嘘をついたらすぐに信じてくれた。


よくもまあ私も簡単に嘘がつけるものだ。


教室に誰もいなくなって5分ほど経ち、誰かが扉を開けた。

その相手を確認しなくても誰だかわかる。


「みんな思ったよりも帰るの早いね」
「……テスト前じゃないからね」


穏やかな声が耳に届く。
やはり相手は瀬野である。


「それじゃあもう帰るんでしょ」

「うん、陽翔も光希もすでに裏門に着いたって連絡があったから……でもなぁ」

「……でも、なに?」

「誰もいない教室でふたりきりって、なんだかワクワクしない?」


また悪いことを思いついたような笑みに、思わず一歩後ずさる。