愛溺〜偽りは闇に堕ちて〜




「……ん、一回しかダメ」

一度唇を離してまたキスしようとしてきたため、慌てて止める。


「あと一回だけさせて?」
「…っ」


甘い誘い。
頭がクラクラする。

また流されてしまいそう。


「そんな顔で見ないで。
止まらなくなる」

「どんな顔…」
「キス以上のことをしたくなる」


優しく微笑んだ彼に、再度キスされる。

学校の一室で。
密室空間で。
ふたり、悪いことをしているような気分だ。



「瀬野…」
「たまにはいいね、学校でこういうことするのも」


瀬野が私を抱きしめ、頭を撫でてくる。
火照る顔を見られたくなくて、大人しく彼に身を預けた。



「本当にかわいいなぁ川上さんは。
相変わらずキスに慣れないんだね、純粋だ」

「……知らない」
「毎日キスしてたら慣れるかな」

「しない」

「俺も気をつけないとね。理性を失って川上さんを傷つけるようなことしないように」


どの口が言っているんだか。
いつも余裕しかなくて、理性を失うことなんてないくせに。

どちらかといえば私がそれを狂わされている。


結局今日も瀬野に敵わず、おかしくさせられて。
受け入れてしまう私がいたんだ。