「それなら俺の印つけていい?」
「印?」
「そう、例えば…」
「…っ」
首筋を指でなぞられる。
くすぐったくて、思わずピクッと反応してしまった。
「こことか、ね?」
「何言って…」
「川上さんは俺のものだーって証」
「そんなかわいく言ったって無駄だから」
首を横に振って、拒否する私。
そもそもこれを受け入れる方がどうかしている。
「拒否ばっかだね、川上さん」
「……っ」
痺れを切らしたのか、瀬野に顎を持ち上げられる。
無理矢理目を合わせられた。
「俺はどうしたらいい?」
「……そん、なの…」
慌てて視線を逸らす。
けれど彼は逃げることを許さない。
「ほら、川上さん。
この後はどうするべきかわかるよね?」
今まで大人しかった瀬野が強引な姿へと変わる。
ここまできたら私に“拒否権”という言葉はなくなってしまう。
「手を出さないって言ったくせに」
「うん」
「本当に最低、早くあんたの裏がバレたらいいのに」
「バラさないんだ?」
「一応脅されてる身なんで」
「……うん、本当に言うことがかわいいね」
“かわいい”なんてバカにしたような言い方。
本当に瀬野なんて大嫌いだ。
そんな彼が額をくっつけてきたのを合図に、目をギュッと大袈裟に閉じてやる。
そのような私を見て、ふっと微笑んだ瀬野はゆっくりと唇を重ね合わせてきた。



